横浪大好き! 五色ヶ浜ルート (その3/全3)
update 2005.11/13
赤色貢岩を見て深海底を考える(地点8、9、10)
難所を越えるとちょっと向こうに赤い露頭が見えてきます。おお!あれが赤色頁岩かあ。赤というよりかは、レンガっぽい色です。これはいわゆる半遠洋性の堆積物です。半遠洋性? 何が“半”なのかと言えば、遠洋性と陸源性の中間的って意味です。チャートほど遠洋じゃなくて、若干の陸源性の堆積物が混ざってたりします。
ほーんときれいなレンガ色ですねえ。ところで海洋調査に行って、海底堆積物をコアリングすると、まったく同じ色の堆積物が取れるんですよ。本当に同じ色です。そしてそれを水洗いすると、きれいなガラスの骨格の放散虫や珪藻がざくざく出てきます。感動します。教科書に書いてあったのは本当だったのか(疑ってるわけじゃないが)。
赤色頁岩はとても細粒です。遠洋の深海ではこんなものがしんしんと降り積もっているのですね。魚のウロコもクジラの骨も混ざってません。CCDより深い海でどざえもんになったらタンパク質はもちろん、骨さえも海水に溶けてしまって何も残らないのでしょう。まさに水の泡だなあ。
これが枕状溶岩です。玄武岩からなります。 |
さて、どういうわけだか、メランジュ中央のこの辺りには遠洋性の岩体がごろごろしてます。波打ち際に下りていくと玄武岩やナノ軟泥石灰岩もあります。玄武岩は枕状をしてて赤、紫、緑色をしてます。高知大学石塚教授の研究によるとこれは海山起源の玄武岩だそうです。横浪メランジュは、海山が沈み込んで、付加体が変形した名残なのでしょう。
玄武岩には淡いピンク色のナノ軟泥石灰岩がへばりついてます。これは石灰質のプランクトンが降り積もってできたもので、いわゆるサンゴ礁の石灰岩よりも深い海でたまったものです。海山がちょこっとだけCCDより高かったためにので、堆積したのでしょう。このタイプの石灰岩は、量的にも珍しいので、ちゃーんと見ておきましょう。と、言いたいですが、玄武岩やチャートと見分ける難しいです。チャートに似てますが、ちょっとざらっと感があって、細かいラミナがあるのがポイントです。でも、塩酸を使った方が手っ取り早いでsしょう。
そういうわけで、玄武岩、石灰岩、チャート、赤色頁岩、泥岩、砂岩という海洋底層序の登場人物が全員登場しました。なるほど。これがあの海洋底層序の岩石かあ。と感慨にふけりましょう。
チャートの壁で記念写真
最後はチャートの壁です。この半島のメランジュ断面のちょうど真ん中に位置します。放散虫年代によるとちょうど白亜紀前期の間に深々と降り積もったチャートだそうです。とても見事な露頭ですので、ここで記念写真を撮りましょう。
チャートの壁です。見事なシマシマです。記念写真を撮りましょう。 |
ところで、なぜチャートはシマシマなのでしょう? チャートは数cmのガラス質の部分と薄い赤色粘土層がきれいな互層から成ります。遠洋で堆積した放散虫という珪質プランクトンのカタマリであることは間違いありません。そして平均した堆積年代は異常に遅く、数1000年/千年!くらいですが、実は赤色粘土の部分がめちゃ時間くってて、ガラス質の部分は比較的一気に堆積したと考えている人が多いようです。なんだか木の成長が夏と冬とで違うためにできた年輪みたいですね。そしてこれは環境変動に応じて、海表面でのプランクトンが大発生と多量の珪質殻の供給によって、シマシマができるという説があります。へー、おもしろい。また別の説では、深海といえども微妙な起伏があって(そもそも横浪メランジュは海山起源らしいし)、時々放散虫軟泥がちょっと浅い斜面から崩落してくるので、一気に堆積したり、停止したりしてシマシマになるという説もあります。で、どっちが正しいのかというと、環境要因なら年代に応じたシマシマパターンがグローバルに同じはずだし、斜面というローカルな問題なら地域によってパターンが違うということで判明するはずです。こんなこと誰でも思いつくことなので、とうの昔に解決済みに違いありません(←不勉強につき不明。自分から話を振っておきながら、、、)
ついでにもう一つ、チャートに関して不思議なことは、現在の深海底に堆積している赤色粘土にはシマシマがないことです。なぜでしょう? おそらく似たような堆積環境だったはずなのに、なぜ過去の遠洋性堆積物にはシマシマがあって、現在のには無いのでしょう? なぞです。昔の海洋システムは今とは違っていた、と言ってしまうとなんだかなあ、って感じもします。そうでなく、シマシマはプレートが沈み込んだ後の続成作用でできるという説もあるようです。これなら地表に隆起・露出した過去の遠洋性堆積物にしかシマシマがないのも説明できます。なるほどねえ。
まとめ
というわけで、メランジュの断面がズバッと見える全面露頭。横浪半島五色ヶ浜ルートを見てきました。まだチャートの壁から南の境界までの区間が残ってますが、それはまた別の機会にしましょう。
北の境界から、いろんな変形構造や遠洋性堆積物や玄武岩といった海洋プレートの破片を見てきました。玄武岩の化学成分分析によれば、これは海山起源だそうですので、横浪メランジュは、海山が海溝にやってきて、付加体が変形しーの、海山の一部が剥ぎ取られーのした痕跡を見ているんだろうなあ、と想像するわけです。
海山衝突かあ、と考えながら横浪をドライブしていると、こんな看板がありました。地元じゃ海山起源説はすでに常識のようです!?
露頭の場所と、お勧めの宿:
学生巡検には次の2つの宿泊施設が便利です。
○ 高知大学海洋生物研究教育センター
(横浪半島にある人気の研究施設。船あり。ただしかなり事前に共同利用申し込みが必要)
○ 高知大学宇佐野外活動施設
(同じく高知大の施設だが、穴場。高知大学に電話で問い合わせて下さい)
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