集集地震(1999M=7.0)の地表地震断層を見る

Update 200.6/20

 

断層が動いた痕跡

  1999年9月21日早朝。台湾中部の集集(チーチー)付近を震央とするマグニチュード7.3-7.7の地震が発生しました。多くの方々が犠牲になりました。

  この地震は台湾西部の車籠埔(チェルンプ)断層が活動したために引き起こされました。この地震の解説は日本地震学会の解説記事に詳しいですし、その時の研究者の生々しいディスカッションの様子がひしひしと伝わる東大の瀬野先生のサイトも見てください。そのほか集集地震でググルとたくさんのサイトが見つかります。

  地震が起きてから5ヶ月たってからとはいえ現地を調査する機会に恵まれました。その時撮影したデジカメ写真を掲載します。当時はまだデジカメの爆発的普及前夜で、130万画素というスペックは今から見ればケータイ並みだし、画像処理上のみょうなゴーストもみられます。でも、逆に当時はフィルムでの記録が大半で、デジカメでの記録が少なかったので、今更ながら掲載します。
(フィルムをスキャンした画像よりデジカメの画像の方がモニター映えするのは気のせい? それって私のスキャンの腕が悪いから?)

なお、著作権は坂口有人にあります。画像はアカデミック目的にでしたら有効に使ってください。使用に断る必要はありません。ただし引用元は明示してください。感謝の手紙なら受け付けてます。

アクティブな台湾のテクトニクス

  簡単にセッティングを説明します。台湾は沖縄の南に位置しますが、関東から沖縄に至る西南日本とはセッティングが全く異なります。

  西南日本は、フィリピン海プレートが沈みこんでいます。

  台湾は、逆にフィリピン海プレートが沈み込まれています。なんじゃそりゃ?!

絵に描くとこうなります。
 

  島弧の後ろ側には縁海と呼ばれる海が発達することがよくあります。日本列島に対して日本海みたいなもんです。日本海も中新世になって突然開き、日本列島はアジア大陸から分離して島になりました。ぐおーっと押し開いたのです。突然、そして一時的に。ところが今じゃ、もうすでに圧縮に反転してます。いずれ日本海は日本列島もしくはアジア大陸の下に沈み込むのでしょう。

  同様にフィリピン列島の縁海として開いた南シナ海は、すでに閉じ始めていて、南シナ海はフィリピン海プレートの下に沈み込み始めているのです。例えるなら、日本海が福岡から北海道の日本海側の下に沈み込みはじめて、海底堆積物が付加体を作って、海底が隆起して陸が増え、山脈ができて、そのうち日本海が全部沈み込んで、ついにはユーラシア大陸地殻までもが日本列島と衝突して、巨大山脈ができたようなものです。簡単に言えばそんなところです。台湾はとてもアクティブな衝突帯なのです。台湾は。そしてこの衝突帯の前縁部に逆断層がどんどん発達して、その中の一つの車籠埔断層が地震を起こしました。

それは特別な地震だった

  さて集集地震がなぜそんなに注目されているかいえば、まず地表変位が8-10mにも及ぶほどに大きいことです。破格の大きさです。そしてなんと言っても重要なのは、活断層のジョーシキの

「変位量とマグニチュードは比例する」

という大事な原則 があてはまらなかった! ことです。そんなバカな! これはすごいことです。そうそうあるはずがありません。例外です。
   どーいうことかというと、断層は南北長さおおよそ80kmくらいあるのですが、この南部から破壊がスタートしました。そこでは約2mくらいの変位とそれに相応しい大きさの揺れが起きました。現に震央付近の集集ではたいへんな被害が出ました。断層の破壊は北へと伝播していって北の端でどーんと変位は増加してついに8-10mにもなったのです。ところが揺れはかなり小さめだったのです。断層がたくさんすべったのに揺れなかった。そんな、まさか、、、

  断層のすべりすなわち 運動エネルギー=地震エネルギー のはずなので、たくさんすべるとめちゃ揺れる はずです。車籠埔断層も北ほど大きく揺れるはずなのですが、なぜかそうじゃなかった。こ、これは不思議だ! ってわけです。

  では、なんでそんな不思議なことが起きたのか!? かというと、それはわかっていません。研究が進行中です。多くの人がいろんな説を考えていますが、決着はついていません。「オレがピリオド打ってやる」という方は、ぜひその道に進んでください。そしてわかったら教えてくださいね。

 

 

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