四国西部 興津メランジュに地震の化石が! (その2)
見所 の続き、、
断層は、崖側が砂岩優勢の野々川層。海側が玄武岩がバカスカ入っている興津メランジュです。断層はその境界にあって、北東走向北傾斜の厚さ5−6mの赤茶けたゾーンが断層の中心部です。この断層のポイントはなんたってシュードタキライトを含むって点でしょう! ところでシュードタキライトっていうのは断層の摩擦発熱で岩石が融解したというもので、断層が高速で動いたことを示してます。それってことは、地震を起こしたっていうことで、故にシュードタキライトが地震の化石っていうわけです。シュードタキライト自体は国内でもぽつぽつ見つかっているんですが、沈み込み帯ではこいつが世界初ってなわけです。
ハイライトはこの赤茶けゾーンです。玄武岩と変形集中帯が互層を成してます。そして変形集中帯はアンケライトと石英の鉱物脈とシュードタキライトと岩片からできてます。アンケライトっつーのは鉄やマンガンが入ったドロマイトで、ま、炭酸塩鉱物ですわ。で、このアンケライトが風化すると赤茶けるので、露頭が見た目赤茶けているのです。それぐらい大量に断層沿いにアンケライトが入っています。石英脈にしろアンケライト脈にしろ、こいつらは流体の沈殿物ですから、断層沿いにどんどん流体が流れて、沈殿物もベッタリ残しているってわけです。で、この沈殿物は、断層運動によって破砕された岩石の隙間にもぎっちり入り込んでいて、しっかりセメントしています。
このように変形集中帯は鉱物脈がいっぱいあるので、白っぽかったり、赤茶けていたりしますが、そこを黒い筋がシャープに入っています。こいつがあのシュードタキライト!!です。じゃぁぁぁ〜ん。このシャープな部分が地震の時にスパッと切れて、ゴゴゴと動いたのです。そしてその摩擦熱で岩石は赤熱し溶け出し、地震後に再び冷え固まったのです。だから地震の化石なのです。このシャープな面が! 触ってみましょう。あちっっ(まさか)。
これは玄武岩と下盤との間に発達してる鉱物脈濃集帯。変形構造やシュードタキライトが多く見られる。 |
白っぽいのが鉱物脈で、黒い直線上のがシュードタキライト! |
よーく観察すると、その黒いシュードタキライトが石英やアンケライトの鉱物脈に切られてたり、またその逆のパターンもあります。つまりこの断層は何度も何度も高速すべりを起こした、ってことは地震を繰り返し起こしてきたこと間違いなし!ってな断層です
断層が高速ですべって地震を起こし、その断層破砕帯を水が通って鉱物脈の沈殿によってセメンとされ、速度弱化と強度回復(次の地震の準備)が繰り返しされたんだろうなあってな想像がふくらむ断層露頭です。
興津メランジュと野々川層
せっかくなので断層の周囲も見てみましょう。断層よりも南側には下盤の興津メランジュが露出します。海洋底層序がそのままガバッと底付けされただけあって、海洋底層序の断面が露出します。四国四万十帯は地層がほぼ垂直なので、壁のようにそそり立つバサルトの層を見る事ができます。おぉーっこれが海洋地殻かぁって感動できます(付加体中にはホットスポット型の玄武岩ブロックが多い中、こいつは本当に海嶺起源の玄武岩らしい。:高知大学 石塚教授 談)。
そして上盤の野々川層は、砂岩優勢で、こんなきれいな堆積構造も残っていて、下盤とのコントラストくっきりです。断層を挟んで岩相がパカッて分かれてます。
すてきな巡検の宿
ちょーお薦め宿があります! 露頭入口から車で10分。おしゃれで快適なライダーズイン中土佐です。ライダーズインはその名の通り、バイク乗りのための宿で高知県内に何ヶ所も整備されています。ライダーズイン中土佐は静かな海辺の立地で(っていうかプライベートビーチだ)素泊まりやキャンプも可能だし、シーフードバーベキューや地魚および地元山菜料理もリクエストできます。もしや断層巡検のために整備されたのでは?! 私のフィールド調査の常宿で、3食込み(昼の弁当も!)1人1部屋でもだいたい5500円くらいです。学生巡検ならキャンプ&バーベキューもサイコーでしょう。いいなあ。
宿はこんな感じの所です。庭ではバーベキューもできます。 | 部屋はこんな感じです。 |
別途、ごちそうをお願いしてみました。 | デザートも特にお願いしてもらいました。 |
巡検スケジュールの例(興津断層だけ日帰りコースの場合、、、そんな人めったにないだろうが)
朝、高知空港着10時 レンタカーで高速南国インターから須崎インターへ
56号線を中村方面へ久礼へ。
昼、久礼でカツオを食べる。ここはカツオ漁港です。久礼の大正市場という商店街のカツオは高知市内のどの店よりもウマイ。鮮魚店でタレ付きで買います。他の店でご飯も買えます。氷もくれるので露頭まで持って行ってもいいですが、ガマンできません。久礼の海岸で食べちゃいましょう。う、うまい!
午後、久礼から志和方面へ、約20分で露頭降り口へ。
午後4時、引き返しましょう。
午後6時半高知空港着。
注*:このスケジュールには道に迷う暇がありません。へたすると高知空港で最終便を見送る羽目になるってもんです。きっちり地図を熟知するか、お近くの詳しい方にガイドを頼むか、泊りがけでゆっくり見学されることをお奨めします。やっぱ泊まりがけでしょ。高知県なんだもの、飲まなきゃ。
そのほか:
国土地理院の1/25000地図なら 窪川(くぼかわ)
ネット上の地図(www.mapfan.com)ならここになります。
宿のホームページ:ライダーズイン中土佐。電話0889-40-2233
興津の断層に関しては
E.Ikesawa, A., Sakaguchi and G., Kimura. 2003: Pseudotachylyte from an ancient accretionary complex: Evidence for melt generation during seismic slip along a master decollement?. Geology, 31, p, 637-640.
坂口有人.2003:四万十付加体興津メランジュの震源断層の特徴と流体移動に伴うセメンテーションによる固着すべりのアナログ実験. 地学雑誌, 112, 885-896.
Kato A., A. Sakaguchi, S. Yoshida, H. Yamaguchi, Y. Kaneda (2004), Permeability structure around an ancient exhumed subduction‐zone fault, Geophys. Res. Lett., 31, L06602, doi:10.1029/2003GL019183.
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