製品(3) 授業でも作れる地震エネルギーの模型! 

地震の規模が手に取るように! 
( って模型だから手に取れるっちゅーの )

Update 2005.5/31

何に使うのかって?

  地震のエネルギーを比べて、「おおお、こんなに違うのかっ!」と、驚くための模型です。簡単ですので授業でみんなで作っても良いでしょう。

  「 でかい地震はどれだけでかい」と、いうタイトルの講義があったなあ(ここ参照)。そこでは地震を断層の大きさと変位量で表現しました。つまり断層が大きければ大きいほど、そして一度に動く量が大きければ大きいほど巨大な地震になるというわけでした。いわゆるマグニチュードいくつという地震の規模っちゅーか、地震のエネルギーの大きさを目に見えてわかるように表現したものでした。これは震度3とか5強とかいった、地表の揺れとは別物でした。思い出しましたか?

  こーいった地震の大きさは、数字で見るよりも図に表すとその違いがよくわかります。でも、それを立体の模型にしたらもっとよく実感できます。というわけで、模型を作ってみましょう。

完成するとこんな感じ。展示によいです。


設計する前に

  とはいえまずは設計からしましょう。それには、どの地震の模型を作るのか? そしてその断層のパラメータはいくつなのか? が必要です。この断層パラメータちゅーのは、ここでは、断層の長さ、幅 そして変位量を指します。このデータはどこに載ってるかというと、佐藤良輔鮑 編 日本の地震断層パラメータ という本が詳しくて良いです。が、めちゃ高価です。福沢諭吉1枚では買えません。また、最新のデータが載ってません。えーっやっぱ最近の地震でなきゃ。という方はググルほかないでしょう。

  お奨めは、東大地震研や、プレートを見る会などとても役立ちます。ところでこのプレートを見る会ってなんなのでしょう?? どんな団体なんだ? 知りてえー

  断層の長さ 変位量 M Mw
東南海地震(1944)  120km 80km  3.1m 8.0  
チリ地震(1960)  800km  200km  24.1m 8.5 9.5
中越地震(2005)  20km  12km  1.4m   6.6
スマトラ沖地震(2005) 900km 150km 10.7m   9.0
引用文献:佐藤良輔鮑編 日本の地震断層パラメータ、力武常次著 地震の正しい知識、島崎邦彦 松田時彦編 地震と断層、東京大学地震研究所web site、海洋研究開発機構 web site

  小さい箱から中越地震、東南海地震、そして最もでっかい箱がスマトラ沖地震です。あの中越地震がこんなサイズになっちゃうんですね。マグニチュードと震度って全く別物を見てるんですなあ。

  それはさておき、今回はとりあえず最近関心が高いスマトラ沖地震と中越地震の模型を作ってみましょう。ついでに東南海地震や南海地震を作ってもよいでしょう。で、そのパラメータですが実は研究者によってちょっとづつ違います。スマトラ沖地震の断層だって最初は長さ600kmと言われたり、1200kmという計算もあったりしていろいろです。

「なにー、そんなに違うのお? で、本当はどれがいいの? 教えてください」
「さあ、どれでしょう?? なにせ各研究者にはそれぞれ理由があって今まさに議論の真っ最中なのです。」
「じゃあ、1年くらいしたら決着するの?」
「うーん。それもどうでしょう。同じデータでも分析方法が進歩するにつれてより詳細にわかってくるものです。60年前の東南海地震(1944)ですら未だに新しい解析結果が発表されたりするのですから。いやあ、ノイズとシグナルを分離する作業というのは奥が深いですねえ(自然科学全般に言えることだが)」

  なーんて。そんなことを言っていても始まりません。地震発生直後にはいろいろなモデルが登場しますが、徐々に落ち着いてくるでしょう。適当なところで誰かのモデルに従って模型を作りましょう。今回使用したパラメータは以下のとおりです。中越地震は東大地震研の報告書から、スマトラ沖地震は海洋研究開発機構の津波を基に計算したデータから引用しました。

  寸法と言いますか縮尺は、作りたい大きさによります。ただ、縦横は断層のサイズなので数10から1000キロメータのオーダーなのに対して、高さは変位量なのでメータオーダーです。高さの縮尺は変えて表現するのがよいでしょう。ちなみに今回は縦横が1/3百万、高さが1/100にしました(つまり断層の大きさは900kmが30cmに、変位量は1mが1cmにしました)。

 

材料と工作

  さて、どれだけ高価な材料を使うかは、模型の用途によるでしょう。展示用ならアクリル製がいいし、学校の授業なら紙製でもよいでしょう。今回はアクリルで作りました。

  アクリルの箱を作るのはややたいへんです。お金がある場合は特注で作ってもらうのも手でしょう。サイズにもよりますが、今回はパネル込みで11000円くらいでした。予算が厳しい場合は、アクリル板から作ってもよいです。その場合のポイントは

材料 何のパーツ? どれくらい? 何円ぐらい?
アクリル箱A スマトラ用 30X15X10cm  3個 2000円X3
アクリル箱B 東南海用 15X10X3cm  1個 1500円
アクリル棒 中越用 1.5X1.5X3cm 1本 300円
透明シール 箱に貼る 10X30X0.3cm 1枚 1200円
のりパネボード ディスプレイ A0版      1枚 2000円
合計11000円くらい

 

仕上げ

1km=1cmとすると中越はこんなサイズに、、、
こんなきれいな透明フィルムが売ってあります。
貼るとこんな感じ。
こぎれいなポスターを作ってこんなボードに貼るとかなり見栄えが良くなります。ぐーっど

  というわけで箱はできました。これに縦横高さのシールを貼ります。紙なら最初から型紙に印刷しておきましょう。アクリルの箱ならこんな透明シールにプリントして貼りましょう。見栄えが良いです。そしてA0版の大型プリンターがあれば、こんな感じのポスターを作って箱を並べます。うーん。いい感じ。

 

私ならこうする

  これが授業なら私ならこうします。まず全員に型紙を配って、箱を作ってもらいます。一つは中越地震とか阪神大震災といったM6〜7クラスを用います(ちなみにどっちも内陸型地震ですね)。次に南海、東南海、東海、関東地震といったM8クラスを用います(こっちは海溝型地震ですね)。用紙の関係上、M8クラスの型紙をA3用紙で作ると、M6クラスはどうしてもケータイくらいの大きさになってしまうでしょう。そしていよいよM9クラスの登場です。スマトラ沖やチリ地震です。ダンボールみかん箱3−4個を事前に準備しておいて教壇に並べます。あの阪神や中越地震に比べて、いかにスマトラ沖やチリ地震が巨大であったかが明確にわかるでしょう。

ねらいは、

1、まず地表の揺れと地震の規模はまったく違うということがわかります。マグニチュードと震度の違いですね。阪神大震災では震度7が記録されてますが、南海地震ではどうでしょう。いくら巨大でも遠ければ揺れないし、小さくても足元で起これば揺れるんですねえ。

2、海溝型地震は内陸型地震よりも大きい。やっぱプレート境界で起きる地震は大きいですね。南海、東南海、東海、関東、チリ、スマトラ沖地震。みーんなプレート境界地震です。

 

 ちなみに

  ちなみにプレートの沈み込みが海溝型地震を起こすのですが、なぜ地震の規模に違いがあるのでしょうか?? プレートの沈み込み速度は地球上でそんなに違いません。ある地域では、100m/年で沈み込んだり、ある地域では1mm/年だったりするでしょうか、いやない(反語)。似たり寄ったりの歪速度にもかかわらず、起きる地震の規模はこのとおり全然違います。前回の工作のブロックスライダーのおもちゃで言えば、糸巻きの速度は一緒ってことですね。なにが巨大地震を引きこすのでしょうか。それはわかりません。知りたいですねえ。私も知りたいです。わかったら教えてください。じゃ、また。

(出し惜しみではありません。本当にわかっていないのです。もし興味があったらその道の研究室に進んで解決してくださいね。)

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