心霊写真に写っていたものは?(その2)
update 2005.3/12
見えなかったけどいた。どこにいた?
目にもとまらず飛んでいた?
さて、霊の姿が写るためには、カメラの前ならどこにいてもいいわけじゃありません。近すぎても写りません。被写体にそこそこ近いところにたはずです。記念写真の時にカメラの目の前を蚊が通過しても、蚊のドアップが写った経験はありません。つまり霊の表情がわかるためのポジションはそこそこ限られているのです。でも被写体のそばでボーッと可視光で光っていたらいくらなんでも気づくはずでしょう。
あ、もしかしたら霊は高速で飛行してて目にもとまらないのかも! シャッター速度が一瞬でないと写らないんですよ。なるほど、そうかも! そういえば心霊写真で霊の顔がはっきりしないのはブレてるせい! もう少しシャッター速度をあげたらクッキリ写るかな?
なーんて。んなわけないでしょ。スナップ写真で写るほどの明るさのものなら、たとえ高速で飛行してても目には見えるはずです。野球のボールだって縫い目は認識できなくても、白い物が飛んでることぐらいはわかります。たとえ私でも。
もっと身近にいた?
じゃ、いったいどこにいたのでしょう。他の可能性を考えてみましょう。被写体の周辺以外でそこそこピントが合う場所。う〜ん。カメラ内部の絞り環付近ならピントが合いますが、、
例えば、超一流スナイパーがM16のファインダーでターゲットをとらえたとします。この時、ターゲットの顔と十字線は同時にピントが合っています。望遠鏡の光路図で説明すると、下図の矢印のポイントでは被写体と同時にピントが合って見えるのです。この位置に十字線を持ってくれば、被写体と十字線は一緒に見えますし、そこにゴミやホコリがあれば、それらも同時に見えてしまいます。これは望遠鏡に限らず、顕微鏡だろうとカメラだろうと同じです。こういうポイントに絞りを置くことで、レンズの端っこの収差の多い不要な光束を除去するんだそうです。もし霊がこのポイント近くにいたらちゃんと写ることでしょう。これらのポイントから離れると、極端にボケてしまって画面全体にボーッとしてしまって、なんだかわからない心霊写真、もしくはただのスナップ写真になるでしょう(心霊なしの心霊写真)。
光路中のどこでもピントが合うわけじゃありません。特定のポイントでだけオッケーです。 |
絞り以外の場所でしたら、あとはフィルムやCCDの表面近くでなら、写真に写ることが可能です。フィルム直前にいて、影絵として写ればよいのです。
しかしねえ、霊がカメラ内部にいたなんて話はどうよ? いったいどんなサイズの霊だっていうのでしょう。ここで問題になるのがフィルムとデジカメのCCDでは撮像面積がぜーんぜん違うってことです。
いわゆる35mm版と呼ばれるフツーのフィルムの一コマが36x24mmの大きさです。面積にして864平方mm。その面積に山や海や人や霊の映像がされます。一方、デジカメのCCDはもっと小さいのが多いです。
これは画素数とは関係ないイメージサークルの大きさの話です。高級デジカメに使われてる2/3インチCCDだと8.8x6.6mmのサイズで、面積にして58平方mm。そこに同じ風景を記録します。フィルムと比べるとわずか7%の面積にすぎません。しかもこれは高級デジカメの場合で、普通はもっと小さなCCDが使われてます。1/1.8インチだと2/3インチの半分だし、私の持ってるやつだと1/2.7なのでもっともっと小さくなります。
もしカメラの中に霊がいた場合、フィルムの端にちょこっと写るサイズでも、デジカメだと超ドアップに写ってしまうってことです。
どーん。画面いっぱい霊の顔。
積極的に出すぎでしょう。ハリウッド映画じゃないんだから。
写真の端にちょっと写ろうと思ったら、イメージサークルの大きさに合わせて小さくならねばなりません。デジカメのCCDサイズは、流行のモデルやユーザーの趣味によって様々ですし、まだまだフィルムのカメラを使っている人もいるでしょう。もし霊がカメラ内部に侵入できたとしても、カメラに合わせてぴったりサイズに変化しないと、よい心霊写真にはならないでしょう。
その瞬間に現れた?
超高速で飛翔している霊もいなさそうで、カメラ内部で気遣ってる超小型霊もいまいちです。写真には写っているが目には見えてない。霊はどこにいたのでしょう? うーん。じゃ写した瞬間にだけ現れたっていうのはどうでしょう? 人がシャッターボタンを押した瞬間に光って、すぐに消える。これなら目にもとまらないかもしれません。可視光で十分な明るさで光ればよいのです。シャッターチャンスを伺って。
でもデジカメってボタン押してからシャッターが切れるまでにタイムラグがありますよね。しかも機種によってタイミングはいろいろです。電池の状態にもよります。いくらカタログで各機種のタイムラグを勉強してもうまくいくかどうかわかりません。霊はどうやってタイミングをはかるのでしょう。私だったらけっこう失敗しそうです。あ、だからめったに写らないのか。なるほど! それにしても普段からシャッターチャンスを伺って、今か今かと出番を待ってる霊というのもイマイチですな。じゃあシャッターが切れる瞬間にだけ霊が写るにはどうしたら良いでしょう?
じゃ、フラッシュで反射したというのはどうでしょう? 普段は暗く、そーっと存在してて人には気づかれません。でもシャッターと共にぴかって光るフラッシュに反射して写真に写ればよいのです。これなら高速で飛翔する必要も、シャッターチャンスを伺う必要もありません。お、これだ! ただしこれは夜のスナップ写真限定です。昼間にはフラッシュをたきませんし、フラッシュに反射するぐらいなら太陽光にも反射しているはずです。明らかに見えちゃいます。
「おいおい、昼間っから堂々としてるんじゃないよ」
ってなことになっちゃいます。しかもフラッシュで写るってことは、霊は可視光線を反射する材料でできているということになります。えー いいの? それで、、、
いるか、いないのか?
さて、ここまでヘリクツをお読み下さって、ありがとうございました。超小型の霊も、シャッターチャンスを伺う霊も、可視光を反射する材料でできてる霊も、怪談話としてはイマイチですな。かなりご都合主義だし「おかしいだろ、そんなの」と言いたくなります。でもどのアイデアも霊の特徴を制限するものであって、決して存在を否定するものではありません。これがポイントです。つまり個人的には心霊写真は心霊現象じゃないと思っているけど、断定できないというのが結論です。
「なにい〜っ ここまで引っ張っておいて わからない とは何だ! はっきり言えぇぇぇ」
と言いたい気持ちはよくわかります。でも私は心霊写真を撮ったこともないし、撮影された状況も何一つ検証してません。そこに写っている物が本当は何なのか、なーんもわかりません。それは心霊写真鑑定の人だっておんなじです。
でも、わからないからと言って、それは霊の存在を示したことにはなりません。
わからないのは
わざわざ心霊写真を題材にして私が言いたかった事は、わからない事ってのは「わからない」って所に分類されるってことです。テレビの特番のように「科学的に完全に証明できたわけではない。つまり心霊現象かもしれないのです」みたいな論理展開はズルイのです。霊でなければならない証拠が必要です。しかも科学的説明にはものすごく高いハードルを課すくせに、自説にはめちゃ甘い。これがまた二重にずるい。
まるでジャイアンが
「このマンガがお前の物だって、100.0% 完璧に証明できるのかよ」(だから俺のだ)
みたいだし。もしくは
「アポロ宇宙飛行士は月でウサギに会わなかったけど、たまたま岩影に隠れていたかもしれない。ウサギの存在が完全に否定されたわけではない」(だから月にウサギはいるんだ)
と同じような話だと思うのです。
科学的にも説明がつかない。でも心霊現象でなければならない証拠もない。それは「わからない」であって決して心霊のものではないのです。勝手に自分ものにしちゃダメでしょー。別の星から宇宙人が麦倒しにやって来たなら、それが宇宙人がやったという証拠がないとダメですし、写真に写っているヘンなものが自縛霊だと断言するなら、その証拠も必要でしょう。根拠もなくそんなことが言えるなら、カメラ内部にいる超小型霊のアイデアの方がマシってもんです。
「カメラにあわせて大きさが変わるタイプです。こいつは!」なーんてね。
そもそもテレビ局だって、本当に宇宙人や心霊現象の証拠を掴んだならヘンな特番なんてしないで、ニュースで流すべきです。局の名にかけて。
わからない事があるのは自明のことです。そしてそれは自縛霊や麦倒し宇宙人の証拠じゃない。 |
世の中の森羅万象、まだまだ多くの事が「わからない」に属していて、その中の一部が科学的説明に成功してきたのだと思います。その領域はどんどん拡大中ですが、まだまだフロンティアは広大なのです。圧倒的にわからないことがたくさんあるのです。だからこそ毎年多額の研究資金が投じられて、少しづつ進展しているのでしょう。ただ、いろんな事が「わからない」と言われてしまうと、どうも居心地が悪くて、つい単純な説明(心霊や麦倒し宇宙人)に流されたい気持ちも、、、わからなくもありません。でも安直に私を不安にさせるような言動は行き過ぎだだと思うのです。
まとめ
- スナップ写真に写る程度のものは必ず目に見えている
- 心霊写真と断定するには心霊の証拠が必要
- 「わからない」からと言って、勝手に心霊のせいにしない
注:心霊写真は話のきっかけとして取り上げたにすぎません。私は鑑定等はできません。お願いですから送ってこないで下さい。おもしろい写真なら超ウェルカムです。
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