大学院予備校

update 2003.5/15

  大学院入試を受ける卒論生のために、院生が自分の体験を書いたコーナーはままありますが、教官側から書いたコーナーというのはあまりありません。そりゃまあ立場上、「こんな受験生こっちからお断りだよ」などとは言えないからでしょう。ねえ、、 私は教官を3年半しかしなかったので体験は少ないのですが、それでも受験生を見ていて、「あーあ、こうすればいいのに、、、」と思ったことを書きましょう。

本文と写真は別に関係ありません。本当に。

Q1、合否のボーダーはどーやって決まるんですか?
A、テストの点で決まります

 面接も全部点数化して合計点順に並べて、全教官の前で「ここより上を合格にしましょう」と決めます。あなたがトップ集団に入っていれば問題はありません。そこからばらつき開き始めるとグレーゾーンになります。どこにボーダーラインを引かれるかは受験生には生死の分かれ目ですが、基準はその時の状況によります。教官側の心理としては1点差なんかで合否を分けたくないものです。圧倒的にできるグループとダメダメグループに大きく分かれてくれれば助かります。
 でも実際には、面接がすごくよくできたこいつを合格させたいっっっ。とか、ボーダーラインをこの受験生の下に、、、という希望もあるかもしれません(助けようがない場合もあるが)。その他、いろんな得点グループに別れた場合、このグループとこのグループとの間の点差が大きいとか、半分も点数が取れてないグループとか、ボーダーを引く際のいろんな判断材料が考えられます。その教室の慣習に従うかもしれませんし、雰囲気で決まるかもしれません。いずれにしてもグレーゾーンにいる学生はたいへんですね。

Q2、定員はどーなっているのでしょうか?
A、定員と合格者数は必ずしも一致しません。

でもまあ、受験生としては気になるでしょうね。でも「あいつとあいつは確実だから、あと何人だ?」なんていう計算はバカげているのでやめましょう。なぜなら良い受験生ならたくさん合格させるし、欲しくない受験生はイラナイからです。もちろん文科省との駆け引きの一環として、強引に定員をオーバーさせることもあるかもしれません。逆に在院生があふれかえってパンクしてるから控えめにしたいなあっていう心理が働くことがあるかもしれません。
 つまりグレーゾーンにいる人は、いろんなスケールのパワーバランスに翻弄させられるかもしれないのです。でも、圧倒的に高得点の受験生を不合格する事はできません。ボーダーを引く作業は一部の人が密室で行うわけじゃないんです。全教官の前で、「この学生だけ不合格にしましょう。私の言うことをきかないから。」なんて言えるでしょうか? ね。でも、いろんな曖昧な駆け引きに巻き込まれたくない人は、できるだけ高い点を取りましょう。

Q3、アイマイな合否基準って、なんだか公平じゃない気がします。
A、院の入試はかなりマシだと思います。

あまりにも機械的に1点差で切ることもありませんし、学生の利益になるような力が作用していて、甘過ぎでは?と思えるくらいだからです。
 それから何でもそうですが、完璧な公平じゃないからといって投げ出しちゃーいけません。
  「完璧な公平ではない」ことと「不公平だ」とは同じではないのです。家柄やワイロで合否が決まったりすることはありえないのです。特に情報公開が進でいるのですから、後から申し開きできないようなことはできっこありません。
  院の入試制度をより良くして欲しいという気持ちは大事ですが、それはそれとして、あなた自身の幸福のために、とりあえず自分の合格に努力を惜しまないことをおすすめします。そして入学した後でも、終わった事と思わずに、入試制度はこうあるべきだ!といった主張をし続けてくれることを願います。後輩と大学の将来のためにも。

Q4、誰が問題を作っているのですか?
A、入試は全教官出動です。

もちろん誰が専門を作成して、誰が英語を作成して、、といった分担はあるでしょうが、それは秘密です。とはいえ大学によって出題傾向といいますか、クセはあります。過去問は公開されているので断固解いておきましょう。ただしここ数年の問題から出題官のローテーションを読もうなどというのは、バカげているので止めた方がいいです。ローテーションは些細な都合や個人の好みで変わるからです。それに入試は院試ばかりではないので「院試の時は出張なので、学部の推薦を担当しますよ」なんていうシフトの変更はありえるでしょ。だから出題官の予想なんてムダですね。

Q5、私の受験料3万円はどこに使われるのでしょう?
A、さあ、どこでしょう?

 たしかに小さな研究科の入試ならコピー機で作った問題が10数部あれば十分ですね。では、どこに3万円もの費用がかかるというのでしょう?「それって教官の手当になっているんですねっっっ」 と、言いたいことでしょう。そんなことはありません。入試業務は普段の仕事の一部であって特に手当はありません(たしか付かなかったよな?)。でもセンター試験の監督だけは手当が出るんですよ。関係ないけど。で、皆さんの受験料ですが、全て国庫に納められてるはずです。つまり全国の学校の電気代や図書費など、皆さんが使っているものの一部になっているのでしょう。

Q6、試験範囲はどこからどこまでですか?
A、知っていて当然の事を知っていれば大丈夫です。

「それじゃあ試験範囲がわかりません」と、言いたいでしょうね。うーん、でもそれは高校や予備校の受験サポートが充実しすぎていたとも言えるかもしれません。大学では全国共通の指導要領はないんですよ。教科書もありません。各教官がせっせと講義ノートを手作りで準備して講議しているんですよ。だから大学によって教えていることはかなり違いがあると言えるでしょ。でも大学院の入試ではいろんな大学の学生が受けるんですよ。だから当然知っておくべき事、誰もが知っている最新の事を中心に試験に出すしかないでしょー。
 つまり授業で習っていなくても、知っておくべきことは自分で勉強しておくべきだ、とも言えるでしょう(もっとも、「だって習ってないじゃん!」などというのは習ったが忘れた、というケースが多いので、「習った記憶はないが勉強しておこう」という態度が正しいと言えるでしょう)。入試は他大学の学生と一緒に行われるんだっていう考えをお忘れなく。

Q7、とはいえ、いい本はありませんか?
A、決まった教科書はありません。

が、岩波書店の図説地球科学なぞおすすめです(90年代の成果が入っていませんが)。基本的には本は好みが大事です。自分にぴったりの本を物色して下さい。私の個人的意見としては、1発逆転ホームランを狙って難しい本に挑戦して、途中で挫折するくらいなら、入門書をじっくり読む方が身に付く量が多いと思います。わからない本は、あなたが悪いのではなく、著者があなたに理解させる力量がないのだと思って、自分にあった本を捜して下さい。

Q8、本屋に行ったら専門書が高いことに驚きました。借して下さい。
A、イヤです。お断りです。

借りたければ図書館に行って下さい。でも、できるだけ本は借りずに自費で買った方がいいです。便利そうなソフトは(たとえすぐには使わなくても)自分のパソコンにインストールするように、良さそうな本は手元に並べておくべきです。たとえ今すぐに読まなくても。それは無駄じゃありません。だって辞書だって1ページ目から順に読まないでしょ。でも必要な時に必要な情報があるべきなのです。しかも専門書はすぐに絶版になってしまいます。本棚は脳の延長だと思って充実させてください。

Q9、どう勉強したらいいでしょうか。
A、過去問をやるべきです。

ここ数年分は完璧にやるべきす。傾向と対策がわかるでしょう。そして好みの教科書を見つけて、ノートを作るべきです。本を読むだけでは理解できません。手を動かすことが重要です。これは人間の脳に関わる問題だと思います。文章で表すというのは偉大なことです。
 少し理解したら同じ境遇の友人に教えましょう。え、ライバルじゃないかだって? そんな発想はバカげてます。前述のように院試は、全員が良い点なら全員が合格するからです。しかも教わった側よりも教えた側が深く理解するものです。耳学問だけでは筆記試験には役立ちません。あえて教えてあげましょう(さっき言った事と矛盾するなあ)。

Q10、過去問をやってみたら、できた気がします。
A、気のせいです。

先輩や先生に添削をお願いしてみましたか? 論述式の問題は一言しか書けなくても、当人としては「できた!」と思うものです。例えば「変成岩について書け」という問題があったとします。ある受験生は「高い温度を受けた石」と書いて終わりかもしれませんし、別の受験生は解答用紙の裏まで、ビッシリ書くかもしれません。どっちが高い配点をもらえるでしょうか? 過去問をやってみたら先生に添削してもらいましょう。え、断られた? なあに、教官はたくさんいるから誰か見てくれますって。また、意地悪な先輩も有用です。この時ばかりは。

Q11、過去問と同じ問題は出題されないと聞きました。過去問は無駄じゃないですか?
A、過去問と同じ問題が出題されないのは本当です。

そういう決まりになっていますから。でも私はなぜ禁じられているのか納得いきません。なぜなら過去問は誰にでも公開されていますし、知っていて欲しいことは、だいたい決まっているからです。つまりここがポイントですね。出題傾向はそうそう変わらないのです。だから過去問をしっかりやることが大事なのです。

Q12、どうしたら合格できますか?
A、英語を勉強して下さい。

これが最も点差がつきます。特に語彙数が大事です。言葉というのは単に膨大な決まり文句のかたまりだと思います(規則性もあるが、例外も多い)。決まり文句をたくさん知っていれば勝てます。
 それから和訳する時には、日本語を書いて下さい。採点していても、日本語になっていないものが大半です。つまり一言一句完璧でなくても、何を言わんとしているのか、が大事です。意味不明な日本語は書かないようにして下さい。直訳はダメです。

Q13、選択問題で注意すべき事はありますか?
A、アイマイな論述問題を選択しちゃいけません。

さっきの「変成岩について書け」なぞ、その典型例です。こんな正解があるようでないような問題は、満点が存在しません。試験テクから言えば、こんな問題を選択してはいけません。逆に言えば穴埋め問題こそベストです。以前、某K大学院では「海洋掘削船を自由に使えるとしたら、どんなテーマでどこを掘削するか、期待される成果も述べよ」、みたいな感じの問題が出ました。同じ出題官として、やられたあ、と思いました。これは「院試にふさわしい問題を自分で出題し、それに答えよ」に等しい問題です。決して解けません。何を書いたら満点をもらえるでしょうか? 受験者は出題者を越えなければならないのでしょうか? また出題者をはるかに凌駕した解答は理解してもらえるのでしょうか? 曖昧な問題は甘いささやきです。選択しないことが求められているのです。

Q14、面接では何が聞かれますか?
A、次の3つです。

(1)お決まりの進路に関する事柄や志望動機
(2)卒論では何をしているのか 
(3)修士では何をするのか 
の3点です。また、筆記試験はどうだったか聞かれることもありますから、筆記試験が終わったらまず徹底的にやり直して、もう一度聞かれたら完璧に答えられるようにしておきます。そして卒論に関しては、1ヶ月くらい前から先輩や先生に徹底して発表練習を繰り返しておきましょう。研究の目的、意義、手法、これまでの自分のデータ、何を失敗して、そこからどう考えたのか(ここポイント!)、そして残りの半年で何をするのか、見通しを明確に答える必要があります。そして修士では2年間の具体的な研究計画をアピールできることが重要です。

 受験生が誤解しやすいのは次の3点でしょう。
(1)面接官はイジメたがっている。
(2)合格すれば院生として在籍できるのは授業料を払っているのだから当然の権利で、2年間どうしようと自由だ。
(3)院生といっても学生だ。 
 まず面接官は、受験者をイジメたがってはいません。「ああ、すばらしい学生だ。良い研究をしているっ。ぜひ来て欲しいっっ」と感動したがっているのです。それなのにノラリクラリと議論をかわしたり、データがなかったり、「はあ、努力します」などとつかみ所の無い返事をするから、欲求不満がたまって怒り心頭ってわけです。ギャラリー(面接官)の気持ちをつかむことが大事です。絵に描いたような学生になりきって下さい。

 大学の予算のうち授業料・入学金収入は1/3にすぎません。つまりあなたが50万円納めるのに対して、100万円が税金からあなたに投資されるのです。つまり院試では、あなたが投資に値することをアピールしなくちゃいけません。端的に言えば
「あなたを入学させることで、教室にはどんなメリットがあるのですか?」
ってわけです。

 そして院生は学生ではありません。卒論生も忙しくて、それまでのいわゆる学生とは違うということを身にしみていることでしょう。しかも大学院は学部の上の学校なのです。中学4年生が高校1年生とは違うのと同様に、M1は学部5回生とは違うのです。休む権利も給料もないけど、ただひたすら馬車ウマのように研究に邁進しなければなりません。夜も寝ずに自分の将来を賭けて。
 え、なぜそんなにがんばらなければならないのか? ですって???? 何を言っているんですか。あなたが希望しているんですよ!

Q15、専門が違う先生との質疑応答って、話が噛み合わないんじゃないですか?
A、あなたの話が論理的で具体性を持っていれば問題ありません。

また、よほどのマニア語が登場するとしたら、うまく解説しながら話すべきです。重要なことは煙に巻いたり、ごまかしたりすることではありません。そんな事をしたら、あなたの評価はサイテーだと思ってよいでしょう。あなたのすばらしい研究結果を理解してもらうことが重要なのです。噛み合うように心がけねばなりません。繰り返しますが、面接官は感動したがっているのです。
え? 面接官が頭悪くて自分の話を理解してくれないって? そういうこともあるかもしれません。でも、そういう相手に合わせなければなりません。あなたは優秀なのかもしれませんが、それを評価するのはあなた自身ではないのです。面接官にあなたの優秀さがわかるように話してあげて下さい。合否は取る側が決めるのです。受ける側の都合ではないのです(それはフェアなのかって? そうですねぇ、、、でもあらゆる場面の現実ですよね。社会変革は必要かもしれませんが、まずはあなたの幸せを優先させましょう)

Q16、面接のコツはありますか?
A、あります。

まず第一に進路を真剣に考えておくことですし、卒論をしっかりやっておくことです。そしてテクとしてはギャラリー(面接官)に満足感を与えることです。つまり、あなたを進学させて研究を継続させて欲しい、と思わせることが重要なのです。ですから面接官の興味を引かえばなりませんし、あなたの研究を理解してもらうことに最大限の努力を払わなければいけません。ゆっくりとわかりやすく従来との違いや、あなた自身の努力や工夫やアイデアを話さなければいけません。そう、面接官は感動したがっているのです! 「ああ、この学生は優れているっっ!」って。それから大学の教官というのは、おおむね良い意味での生意気な奴が大好きです。従来の説を圧倒的なデータで論破する奴を待っているのです。「ああ、こいつは俺を越えているな」と、思いたいのです。こういう思いを満足させてあげなければいけません。だから「君の言っていることは違うんじゃないか?」といった質問も、反論されたくてしょうがないから言っているのです。それなのに「はあ。そうですね」なんていう気のない返事をするから面接官はイライラするのです。
  具体的なテクとしては質疑応答では何を聞かれても、「そんなことありません」と答えるとよいでしょう。否定しておくと、あなたの話は注目されるでしょうし、しかもその間に答えを考えることができます。反論された場合は、面接官とはいえ、あなたの話を誤解しているかもしれません。また重要なポイントを聞きそびれたかもしれません。もう1度あなたの主張を説明してみましょう。そうすると誤解が解けるか、もしくは質問を言い替えてくれます。(っていうか、当然の研究結果ならともかく、新しい話は誤解されるのが当然なのです。たった一度話しただけで理解されたらビックリします)。何度も質問と返答を繰り返して、面接官全員がちゃんと理解してくれたら、もう、もらったようなもんです。面接官もきっと深い満足感を得たことでしょう。それでいいのです。人前で話すというのは、エンターテイメントなんですから。最後に「いやあ、良くやってるね」と、誉めてくれるかもしれません。そうしたら「そんなことありません」と、答えましょう。

Q17、私はアーティストになりたいのですが、まだ学生のままでいたいので、とりあえず院(地質)に行こうかと思います。どうですか?
A、甘い考えです。 やめときなさい。

二足のワラジでやっていけるほど音楽の世界は簡単なのでしょうか? あなたのライバルは音楽一本ヤリで寝る間をおしんで音楽に取り組んでいるのではないですか? それに授業料ももったいないですよ。その分バイトを削って1分でも1秒でも多く音楽に費やすべきでしょう。それに断固としてアーティストになりたいのであれば、いざという時の保険はいらないんじゃないですか?

Q18、私は何に向いているのでしょうか?誰が教えてくれれば、と思います。
A、ズバリ、小石を数えるのに向いています。

世界中に小石がいくつあるのかを数えましょう。無駄な仕事でしょうけど、、、 冗談ですが。
 自分が何をしたいのか? 何が大事なのか? シンプルですがきわめて重要なテーマだと思います。 自分にとっての理想はどんな状態か、頭でなく腹の底でやりたいことは何か、次の2年間では何をするのか、、、、こういった事を他人に委ねてはいけません。自分で判断しなければ、あの狂信的なXXX信者と同じだと思います。

四万十帯に便利

何かに便利

1.おもしろい写真
(その1)
2.大学院予備校
3.おもしろい写真
(その2)
4.単位の取り方
5.おもしろい写真
(その3)
6.おもしろい写真
(その4)
7.心霊写真に写っていたもの
8.遭難したかも!
9.用語集
10.用語集2
11.ムー大陸はなかった!
12.自然科学サイトと読者と、
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(その5)
14.おもしろい写真
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