update 2003.8/2
私は理解してませんでした
自分が授業を受けているときには、居眠りをしていても「しめしめ、気づかれてないぞ」って思っていましたが、自分が前に立ってみると実によく判るんですな。これが。特にクーロンとかモールといった破壊力学の話は、はっきり言って良く寝られてしまします。まあ、自分だって学生の時には全くわかってなかったし、よく寝てたので、しゃーないでしょう。
と、言ってしまっては話にならんでしょう。。。 クーロンもモールも実はめちゃ便利なんです。これを自由自在に使えるようになるとかなりオモロイです。そこをわかってほしいいいい。でも学生寝るしいいい。じゃあどうしたらいいのか? はい。数式を出さずに直感勝負で良しとしましょう。数式の方がわかりやすい人は、最初からフツーの教科書を読んでね。
エッセンスは滑りの実験
剪断応力を加えると、粘土に滑り面が形成されて、滑り始める。このギリギリの時の応力が、すなわち強度だ。粘土の上のおもりの量を増やすと、それにに比例して強度も増加する。 |
では、クーロンの破壊基準について考えましょう。 昔々クーロンというおっさんが(おばさんかもしれんが)、粘土の強度を知りたいと思いました。どうも土木工事のためらしいですわ。で、分厚い粘土板を剪断させるのに、どんだけ力がいるか計りました。
どうやって計ったか知りませんが、私が教壇で実験するなら、固定した粘土板とバネばかりで計るでしょう(右図参照)。で、クーロンは粘土の上におもりをどんどん載せると、剪断強度もどんどん強くなることに気づきました。比例的に!。めでたしめでたし。
いやいや。それで終わったらよくわからんでしょ。彼(彼女?)のシンプルな実験ですが、ちっと身近な例で考えましょうか。教科書を机の上に置いて、滑らすとしましょう。つるつると。この教科書の上に手近な石なぞを置くと、滑らすためにはより強い力がいるでしょう。これがすなわち剪断強度が増したってやつですな。ん?それって摩擦の法則じゃないのって気づいた人もいるでしょう(多分1教室に1人いるかいないかぐらい、、、)。
おもりが重いと滑りにくい。当たり前? でもそこがポイントなんだなあ。 |
そうですね。ってなわけでこれをグラフにしますと右図のようになります。縦軸を剪断応力、横軸を垂直応力とすると滑り始めるのに必要な剪断応力は右肩上がりの比例関係になります。さっきの教科書の上の石の重さを重くするほどに滑りにくくなるってわけですな。で、どんどん重くすると無限に滑りにくくなるかというと、まあものには限界があって、そのうち頭打ちになるでしょう。グラフも右のほうで次第に水平になる。じゃあ今度はおもりをどんどん軽くしていったらどうなるでしょう?
キーワードは粘着力
おもりがゼロでも滑らすにはちょっとは力がいる。それは粘着してるから。粘土板や教科書の滑り実験と岩石やいろんな物質の破壊との違いは、この粘着力が強いというだけの違いなんだなあ。 |
剪断強度はどんどん小さくなって、ついにはゼロに。いや、ならんでしょ。ちょっとは力がなきゃ動かんでしょ。ゼロってわけにはには。ねえ。ましてや最初のクーロンの粘土実験だったらなおのこと、おもりがなくてもある程度力を掛けないと滑らんでしょ。つまりさっきの剪断強度のグラフは、原点を通らないってことですな。このおもりなしでもちょっと必要な剪断応力を粘着力って言います。ふむふむ。たしかに言われてみれば、おもりが無くても粘土板は粘着してるから、剪断するのには力が必要だわな。
ここまで解ればバッチリ
さて、この粘土板。水を含んだらどうなるでしょう? ぐずぐずだったら粘着力も小さくなるかも。また反対に乾燥してきたら? 温度をがんがんに上げて、しかも数100万年たったら?? すなわち岩石になったらどうなるのでしょう??? きっと粘着力は以前よりもおもっきし上がるでしょう。おもりを載せなくても剪断するにはけっこうな力が必要となる。そして粘土の時と同じくおもりの重さに応じて剪断強度も上がるでしょう。つまり教科書を滑らす実験も、粘土板も、そして岩石も基本的には同じなのです。(ここが論理のジャンプ!です。要注意) 物に応じて粘着力やおもりに対する剪断力の増加の割合は変化するでしょうが。
さて、グラフ上における剪断するのに必要な応力の直線以下では、剪断しないわけですが、岩石なら破壊しないわけですが、これをクーロンの破壊基準っていいます。これ以下の応力状態(ある垂直応力と剪断応力の状態)であったならば断固、何万年経とうとも決して破壊しないのです。逆に応力状態が、この線に達すれば速攻で破壊するのです。
こういう一見当然のこともつい忘れがちになるものです。水中だから、地下深部だから時間がかかれば、、、いいえ。割れる物は割れるし割れない物は断じて割れないのです。(ただし自動車学校の運転免許模試の鉄則を忘れてはいけません。「断じて、決して、断固として、、とつくものは正しくない」 そう、クーロンにも例外があるのです。本当は、、、化学反応や間隙水圧変化など、、)
では来週は、物体内部のクラックの応力状態をきわめてシンプルに記述する、便利なモール円の美しさを学びましょう。
今回は下記の教科書を参考にさせていただきました。
粟津清蔵 監修 「絵とき土質力学」狩野謙一、村田明広 著 「構造地質学」